hibibikki日々々記

2023.07.19
爪切り

爪切りのことを考えている。

 

数年前に両親を順に看取って実家を相続し、なんとなくそのままそこを仕事場にしながら住み着いている。家にある爪切りは私が家を離れる前から使っていたと記憶しているので、もう30年くらいは経っているはずだ。相応に年季が入っていて、爪を切る時にくるりと回す上の部分のカバーが取れ、なかなかハードな姿になっている。だけど良く切れるし、何より手に馴染んで使いやすいので、こればかり使っている。

周りからは「新しいのを買えば?」と言われる。

実は新しい爪切りも持っている。見栄えのいいのを3本。だけどやっぱりしっくりこなくて、その年季の入った爪切りを使ってしまう。

 

爪を切るたび、財布のことを考えるようになった。

 

どんな財布も、年数が経てばくたびれていく。周りはきっと「使い込んでいるなあ」と思うだろうけど、持ち主はそのくたびれっぷりには案外目が向かない。

毎日見ているから気がつきにくいというのもあるだろうけれど、多分見ているものが少し違うのではとも思う。

この爪切りは私の目には「使いやすい道具」だけれど、側から見れば「カバーが取れたボロボロの道具」だ。

「くたびれた財布」は、誰かが長年愛用している「お気に入りの財布」かもしれない。

私が見ているものとあなたが見ているものが同じとは限らない。

 

古い爪切りを使うのに言い訳なんて必要ないんだけどさ。